2022年12月11日の話(7) 都営アパート当選-3

生活ギリギリの所で 都営アパートに当選した僕たち家族は 無事に引っ越しを済ませた。
部屋の狭さは否めないが そこそこ新しい物件で 何より場所は一等地。
お気に入りだったのが アパートのベランダから見える 桜の木を眺めることだった。
いつものようにベランダにいると 近くに自家焙煎のコーヒー豆を 販売するお店があり あまりにもいい香りが 鼻をくすぐった
そこのお店はスペシャルなコーヒー豆を 毎月入荷していてその月は “キューバ産クリスタルマウンテン”だった。
たまたまつけたTVで ライ クーダーとキューバの老ミュージシャンを 描いた映画『ブエナビスタ ソシアルクラブ』 がやっていたので コーヒーを片手に映画を観ていた。
すると、、、
その老ミュージシャンの自宅には 自分だけの『祭壇』があったのだ そこで毎日『感謝』の祈りを捧げていると、、
『感謝』、、、あっ、、、
あの日表参道を歩いたあの日
あの日の『感謝』で 今日の日がある
『未来は過去からやってくる』
僕たちはその事を知っている その証拠にいつも誰かと会うときにこう言う 『後でね』 先ではなく『後』でと。
僕はコーヒーを飲み終えると 本棚の上に自分だけの場所を作った。

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