2022年12月11日の話(19) 昔話その6

親父の死因は 海での事故だったが 実際には酒の飲み過ぎでの 内臓疾患だった
親父の葬式の事だった 僕は人が亡くなった事がわからず 親戚やら近所の人やらが たくさん集まっているので 一人“はしゃいで“いた。
いや、今思えばわかっていた わざと“はしゃいで“いた。
葬式が始まる前の事だ
親戚だけが集まる席で 母はひどく親戚に 罵られていた
あんたがしっかりしてないから 宣治は死んだんだ! あんなに酒ばっかり飲ませて 冗談じゃない どーしてくれるんだ!
意味のわからない 罵声に母はうなだれているだけだった
何もできない僕は 母を守るために 皆の目を母から離すために はしゃいでいたんだと思う
しばらくすると 近所のおじさんが 僕を外に連れ出してくれた そしてこう言った
『大丈夫、お母さんは悪くないよ』と
そっから先の記憶は残っていない
葬式が終わり しばらくすると 母は僕達を連れて家を出た。
父親の死は 自分自身が弱かったんだと思う 自分に優しく出来ず 酒に逃れる 結果その酒に飲み込まれた。
母は それを自分の責任された 家を出て当然だと思う。
もちろんわかってくれる 親戚や近所の人達もいた。 僕が幼い頃は 街中で会えば皆に可愛いがってもらった。
それでも 母も父親を愛していたんだと思う。
その証拠に季節ごとには 親父の墓参りをしていた。 お盆や彼岸ではなく
他の親戚が 海の見える墓に供えた花が 枯れる頃に いつも手を合わせていた。

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